長期円安のけん引役になるか、円キャリートレードに本格的回復の兆し
(ブルームバーグ): ドル・円相場は9月に入り、24年ぶりの1ドル=140円台まで円安が進んでいる。金融緩和を続ける日本と積極的な金融引き締めを進める米国との金利差が円売りの主な要因だ。これは資金を安い金利通貨で調達して、高い金利通貨で運用する円キャリートレードの相場環境が改善していることも意味する。JPモルガン証券は、高インフレ抑制のための金融引き締めが世界的に強まれば、キャリートレード絡みの円売りが円安長期化のけん引役になるとみている。
JPモルガン証券為替調査部のベンジャミン・ シャティール調査部長と中村颯介ストラテジストはリポートで、「内外政策の相違はもはや日本と米国の間の現象ではなく、円は世界で唯一のゼロ金利通貨になりつつある」とし、円がドル以外の主要国通貨に対してもキャリートレードの対象になり得る可能性を示唆した。円を調達通貨としたキャリートレードは「日銀が現在の緩和政策を維持する限り、さらに増える可能性があり、円相場にとって追加の逆風になるだろう」と言う。
中村氏によれば、日本と海外の金利格差が今後広がっていけば、「キャリートレードの増加が円安相場をけん引していく可能性がある」。円キャリートレードの規模を測るうえで参考となる外国銀行在日支店の本支店勘定における資産(日銀公表)は5、6、7月に1000億円を超え、2008年以来の水準に達している。規模が最も大きかったのは07年2月の2319億円だった。
中村氏は、円相場について「円キャリートレード最盛期に並ぶような円安局面になっていく可能性がある」と指摘する。ドル・円についてもチャート的には1998年高値147円台まで節目がない中で、ドル高・円安に行きやすい状況になるとみている。
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