高市早苗氏なら省庁の縦割りに横串を刺すことが可能 「日本として経済安保体制をどう強化するのか」期待
第2次岸田文雄改造内閣が先週10日に発足しました。注目された高市早苗氏は、経済安全保障担当相として入閣しました。
【表でみる】第2次岸田改造内閣の支持率
今年の通常国会冒頭、衆院予算委員会のトップバッターが高市氏で、私は直後にインタビューをする機会がありました。その時、経済安全保障に関する機密情報の取り扱い資格「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」を法案に盛り込むべきではないかと問題提起をしていました。
当時は、経済安全保障法制ができるよりも前です。適格性評価は、親族や交友関係、資産などまで調べるので、野党が「人権侵害だ」と反発するのは必至でした。まずは法案成立を第一に考えて先送りとなりました。
ただ、高市氏は「今後の法改正の際には盛り込みたい。毎年でも法改正をしていかなくてはいけない分野だ」と強い意欲を見せていました。今回の就任会見でも、「国際共同研究の推進を念頭に、認証制度の構築へ措置を講じる」と記した推進法の付帯決議を挙げ、スピード感を持って取り組むと語っています。
こうした仕組みづくりが急務なのは承知のうえで、高市氏に期待したいのは、さらに大きな「日本として経済安全保障体制をどう強化するのか」というところです。
第2次安倍晋三政権で、内閣官房副長官兼国家安全保障局次長を務め、現在は同志社大学特別客員教授の兼原信克氏は、著書『日本の対中大戦略』(PHP新書)で、「経済安全保障の中核は、軍事と産業・科学技術政策の相関である」と指摘しています。
日本の科学技術予算は約4兆円ありますが、菅義偉前政権時代に問題提起があった通り、今までは軍事・安全保障に関する分野にほとんど投入されてきませんでした。
4兆円といえば、防衛予算の8割にあたる巨費ですが、文科省などがこの予算を握り、〝軍事目的〟とされる研究に渡すことを官学一体で拒否してきたのです。宇宙・サイバー研究など、もはや軍民の線引きなど不可能な現代において、旧態依然とした考え方でありましょう。
中国は今月初めの大規模軍事演習で、日本の排他的経済水域(EEZ)に弾道ミサイル5発を撃ち込んできました。共同通信によると、これは日本のEEZを含まない第2案もあったにも関わらず、習近平国家主席自らが決断したということです。
先週拙欄で触れましたが、やはり台湾だけでなく、わが国に対して強力なプレッシャーを掛けてきていたのです。
もはや、残された時間は無限ではありません。「防衛費の増額」はもちろん急務ですが、それと同等かそれ以上に、「すでにある予算、技術の有効活用」が求められます。
科学技術予算や関連技術は宝の山です。高市氏が、内閣府特命担当相である経済安保相であれば、文科・経産・防衛といった省庁の縦割りに横串を刺すことが可能だと思います。
■飯田浩司(いいだ・こうじ) 1981年、神奈川県生まれ。2004年、横浜国立大学卒業後、ニッポン放送にアナウンサーとして入社。ニュース番組のパーソナリティーとして、政治・経済から国際問題まで取材する。現在、「飯田浩司のOK!COZY UP!」(月~金曜朝6―8時)を担当。趣味は野球観戦(阪神ファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書など。