黒田日銀が「自爆」した…総裁退任の直前でやらかした「ハイリスクな奇策」の中身
退任に向けたカウントダウン
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「日銀、金融政策の現状維持を決定 10年金利0.5%の上限据え置き」 注目されていた1月の日銀政策決定会合。その結果が発表された18日午前11時40分に各社が「現状維持を決定」と大きく報じたことで、金融市場は株高、円安、債券高(金利低下)という反応を見せた。 【写真】5年後に「株価が5倍」もありうる「日本企業10社」の実名を大公開する...! 日銀が昨年12月の金融政策決定会合で、想定外にイールドカーブコントロール(以下YCC)の10年国債の誘導利回りの変動幅を0.25%から0.50%に拡大するという「実質利上げ」に踏み切ったことを受けて、債券市場では日銀が新たに設定した0.5%を上回る水準まで国債が売られたこともあり、今回の決定会合でも変動幅拡大などの修正が行われるのではないかという警戒感が根強かったため、「現状維持」という決定に市場が安堵した格好になった。 しかし、今回の「金融政策現状維持」というのは、メディア等の注目が10年国債の誘導目標金利の「変動幅拡大」に過剰に集中したことを利用した「煙遁の術」煙幕作戦だったといえる。 日銀がこうした目くらまし作戦をとったのにはいくつか理由があった。 それは、実際の金融面で、「名実共の利上げ」をせずしてYCCの維持が困難になってきているということに加えて、4月8日に任期が切れる黒田日銀総裁の後任人事に関わる日程的な問題である。 黒田日銀総裁が4月8日に任期満了を迎えることはよく取り上げられるが、副総裁の任期が3月19日で切れることはほとんど報じられていない。副総裁の任期が問題になってくるのは、雨宮副総裁が有力な後任総裁候補になっているからである。 政府は2月の国会で後任候補を提示し、国会承認が得られれば任命する方針を示しているうえ、与党が衆参ともに過半数を占めている現状からすると、2月中に次期日銀総裁が決定する可能性が高い。 つまり、3月9、10日に予定される次回の日銀の金融政策決定会合時点では、次期日銀総裁と副総裁のもとでの新体制が決まっている可能性が高いのだ。筆者は、2期10年総裁を務めてきた黒田総裁は、前任の白川総裁にならい4月8日の任期を待たず副総裁と同じく3月19日に辞任し、速やかに新体制への移行を図るつもりであり、自分が主導的な役割を果たす会合は今月で最後だと決めていたのではないかと考えている。 その方が自身の総裁時代の金融政策の検証と新たな体制での金融政策の修正を早く始められるうえ、批判の矢面に立つリスクも少ないからだ。 今回の会合で黒田総裁が「YCCは十分持続可能」と強調してみせたのも、こうした日程を考慮して逃げ切りを図る意図を感じさせるものだ。