2023年のマンション市場はどうなる? アゲンストの風が吹く可能性、世界的な不況の到来3つの原因
【マンション業界の秘密】
少し早いが、来年のマンション市場がどうなるかを考えてみたい。
一番の焦点は、金融政策である。10年続けて、当初の目標を実質的に果たせなかった異次元金融緩和が、どういう終わり方をするかである。
来年4月に日銀総裁が交代。金融政策の変更は確実視されている。問題は、どの程度政策金利が引き上げられるかだ。アメリカのように1年に4%も上げれば、マンション市場には嵐が吹き荒れる。販売不振と大幅な値下がりである。
日銀の新総裁が、そこまでラディカルな金利政策を採用するとは思えない。せいぜい、来年末までに0・5%から1・0%の引き上げだろう。
そうなると、金利上昇を原因とした価格下落は、あってもかなり小幅になる。本格的に下落が確認できるのは、その翌年以降になりそうだ。
しかし、来年はそれ以外にもマンション市場にアゲンストの風が吹く可能性がある。それは、世界的な不況の到来である。
原因は大きく3つあると考えられる。
第1は、言うまでもなく中国の経済成長に急ブレーキがかかっていること。世界第2位の経済規模を持つあの国では、不動産バブルが崩壊し、共産主義への回帰政策等で経済活動が停滞。おまけに3期目の習近平政権は毛沢東時代への回帰を目指しているとしか思えない政策を進めている。中国経済が減速すれば当然、世界経済に大きな悪影響をもたらす。
第2は、途上国や新興国の過大な債務が引き起こす金融危機。例えば、韓国では通貨防衛のための金利引き上げで、大きな企業倒産や個人破産の激増が起こりそうだ。そのほか、過剰な債務で国家的なデフォルトに至る可能性のある国が複数ある。
第3は、世界的なインフレによる消費の減退。モノが売れなくなれば、川上の資源から川下のコモディティ市場までが一気に停滞してしまう。
こういった原因が複合することで23年の世界市場は同時不況に見舞われる恐れもある。
現在のところ、日本経済にはそういった不安要因を表すような現象は起きていない。7―9月期のGDPは年率換算でマイナス1・2%であったことくらい。
上場企業の決算も輸出系企業を中心に空前の好調さを示している。だから、日経平均も比較的高い水準で安定している。失業率も2・6%と完全雇用状態だ。
それを考えると、日本経済に世界同時不況の影が忍び寄るのは来年春以降。
ちなみにウクライナ戦争が停戦になるか、終了すれば世界経済に与える心理的な好影響は大きそうだ。ただ、実質的なメリットは多くない。
来年の前半まで、マンション市場に嵐がやってこないと考えるのなら、売却予定の方は「来春まで」をひとつの目安にすべきであろう。購入を急がない方は「あと1年か2年」という想定で待ってみるのがいいかもしれない。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。