1ドル140円超が視野に入るドル円レートとFRBの利上げ姿勢の展望

2022年09月01日

ジャクソンホール会合でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が物価安定回復に向けた強い姿勢を見せたことをきっかけに、金融市場ではFRBの利上げ継続への観測が一段と強まっている(コラム「ジャクソンホールで改めて示されたFRBの『景気を犠牲にしても物価高を定着させない』という強い意志」、2022年8月29日)。 先行きの政策金利の見通しを強く反映する米国2年国債金利は、9月1日の東京市場で一時3.5%と2007年以来の水準にまで達した。また長期金利の上昇は為替市場でドル高圧力を高め、ドル円レートは139円台後半と、140円超が再び目前に迫ってきた。 FRBは、歴史的な物価高騰へのFRBの対応が遅れたことで、家計、企業、金融市場での中長期のインフレ期待(物価上昇見通し)が上振れ、それが高い物価上昇を定着させてしまうことを強く警戒している。ジャクソンホール会合でもパウエル議長は、高い物価上昇率の定着を許してしまう場合の大きなコストについて強調した。 ただし、物価高騰へのFRBの対応が遅れたことで、中長期のインフレ期待が大きく上振れてしまった、との事態は、少なくとも金融市場では生じていない。10年物価連動国債から算出される市場のインフレ期待(BEI)は現時点で+2.5%程度である。今年4月には一時+3.0%を上回ったが、その後は抑制されており、FRBの急速な利上げが市場のインフレ期待を十分にコントロールできているように見える。

実質金利上昇で景気悪化の兆候が広まる

7月の米国消費者物価は前年同月比で+8.5%まで上昇しているが、向こう10年間の物価上昇率の予想は、その3割程度の水準に留まっている。2015年に始まった前回のFRBの利上げ時には、市場のインフレ期待(10年)は+2%程度であった。ただし、2008年のリーマンショック以前には+2%台半ば程度であり、現在の水準は過去と比べて決して高いものではない。 こうした中で、FRBが利上げをさらに進めていけば、実質政策金利(名目政策金利-期待インフレ率)は過去と比べてもかなり高い水準にまで上昇することになる。経済あるいは需給ギャップに対して中立的な実質金利、いわゆる自然利子率と実質政策金利との差によって金融政策の効果が決まる、との考え方が一般的である。この考え方に従えば、FRBのこの先金融引き締めは景気にかなり抑制的に働くとの見通しを持つことができるだろう。 現時点でのFF金利(政策金利)は+2.25%~+2.5%と、前回の利上げ時のピークの水準に達している。その際の実質政策金利は+0.25%~+0.5%程度だった(+2.0%の期待インフレ率が前提)。9月の次回米国連邦公開市場委員会(FOMC)でさらに0.5%あるいは0.75%の幅での利上げが実施されれば、実質政策金利は+0.25%~+0.75%程度と前回の利上げ時のピーク時に並ぶ、あるいは上回る(+2.5%の期待インフレ率が前提)。 さらに、年末までにFF金利が+3%台後半まで引き上げられれば、実質政策金利は+1%を上回ることになる。この時点では、金融引き締めによる景気悪化の傾向は、現在よりも明確に確認できるようになるのではないか。 他方、FRBは短期金利と18か月国債金利が逆転すれば、金融引き締めが行き過ぎ、景気後退に陥るリスクが高まった証拠と考えるとしている。現在18か月の国債金利は+3.5%であることから、この水準が維持されたままFF金利が年末までに+3%台後半まで引き上げられれば、逆イールドが生じ、FRBは追加の利上げに慎重になる可能性が高まるだろう。

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