10年国債の利率が8年ぶりに0.5%に引き上げ。今後の長期金利の見通しは?
1月5日に入札される10年国債(369回)の利率が0.5%と前回12月に入札された368回の0.2%から引き上げられた。
10年利付国債(第369回)の入札結果(令和5年1月5日入札)
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20230105.htm
昨年12月20日に日銀は長期金利(10年新発債の利回り)の変動幅を±0.25%程度から±0.50%程度に引き上げた。その結果、10年国債の利回り(長期金利)が0.25%近辺で止まっていたものが、0.4%台に上昇してきたことによるもの。0.5%となるのは、2014年12月の入札以来となる。
すでに12月20日以降の10年国債の利回りが0.4%台に上昇していたことで、銀行は住宅ローンの固定金利を1月から引き上げることを発表していた。このため、今回、10年新発債の利率が引き上げられたからといって、これで新たに住宅ローンの固定金利が引き上げられるわけではない。
ただし、今回の10年国債の入札の結果を受けて、個人向け国債の10年変動タイプの初期利子が決定されるため、当然ながらこちらは前回12月分からは引き上げられる。さらに10年変動タイプならば、今後さらなる利率の引き上げがあっても、それに応じた利子が得られる。
今後、長期金利がどう動くのか。それについては日銀のイールドカーブコントロール、つまり長期金利コントロール次第となる。ただし、日銀が今後どのように動くのかについては見方は分かれる。
私はイールドカーブコントロールやマイナス金利は止めて、普通の金融緩和策に戻す、いわゆる正常化を進めるべきだと考える。
すでに消費者物価が前年比4%近い上昇のなか、異常な緩和を続け、それを続けるために量的緩和を拡大するような格好の日銀の政策は間違っていると考える。
正常化によって金融政策の柔軟性と機動性を確保した上で、その後はファンダメンタルズなどに応じた金融政策を行うべきだと考えている。もし正常化に向けて日銀が動くとなれば、さらに長期金利は上昇してくる可能性が高い。
記事に関する報告久保田博幸金融アナリスト
フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。