2ヵ月が経過した「FRBの量的引き締め」の進捗状況【ストラテジストが解説】
本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。
- QT開始最初の1ヵ月で保有有価証券は232億ドル減、計画の月475億減に比べてかなり慎重。 ●次の1ヵ月では、保有有価証券は170億ドル減となり、減少ペースは最初の1ヵ月よりも鈍化した。 ●QTの強力な引き締め効果のためFRBは慎重な舵取りに、ただ9月以降の資産減少ペースに注目。
QT開始最初の1ヵ月で保有有価証券は232億ドル減、計画の月475億減に比べてかなり慎重
[図表1]FRBのバランスシート変化1 (注)2022年5月25日時点と7月6日時点との比較。金額の単位は百万ドル。 四捨五入の関係で合計や本文中の数字と合わない場合あり。(出所)FRB、Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
米連邦準備制度理事会(FRB)は、6月1日から財務省証券などの保有資産を減らす、いわゆる量的引き締め(QT)を開始しています。計画では、当初の縮小上限額について、財務省証券が月300億ドル、政府機関債と住宅ローン担保証券(MBS)が月175億ドル、合計で月475億ドルに設定されています。3ヵ月後には、それぞれ月600億ドル、月350億ドルに引き上げられ、合計で月900億ドルとなります。 なお、7月13日付レポートでは、5月25日時点と7月6日時点におけるFRBのバランスシートを比較し、QT開始後、最初の1ヵ月の進捗を検証しました。その結果、保有有価証券(財務省証券、政府機関債、MBSの合計)は232億ドル減少したことが確認されました(図表1)。 前述の計画における当初の上限額は、月475億ドルでしたので、QTは慎重なスタートを切ったといえます。
次の1ヵ月では、保有有価証券は170億ドル減となり、減少ペースは最初の1ヵ月よりも鈍化した
[図表2]FRBのバランスシート変化2 (注)2022年7月6日時点と8月3日時点との比較。金額の単位は百万ドル。 四捨五入の関係で合計や本文中の数字と合わない場合あり。(出所)FRB、Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
そこで、今回は、QTが開始されてから2ヵ月経過後の進捗状況を、改めて検証してみます。まず、前月からの変化をみる上で、7月6日時点と8月3日時点におけるFRBのバランスシートを比較します。7月6日時点で、バランスシートの総額は、8兆8,919億ドルでした。このうち、保有有価証券の残高は、8兆4,560億ドルで、内訳は財務省証券が5兆7,443億ドル、政府機関債が23億ドル、MBSが2兆7,093億ドルです。 8月3日時点のバランスシートの総額は、8兆8,746億ドルでした。このうち、保有有価証券の残高は、8兆4,390億ドルで、内訳は財務省証券が5兆7,191億ドル、政府機関債が23億ドル、MBSが2兆7,176億ドルです。つまり、7月6日時点から、バランスシートは173億ドル縮小、保有有価証券は170億ドル減少したことになり(図表2)、保有有価証券の減少ペースは、最初の1ヵ月(232億ドル減少)から鈍化したことが分かります。