2023年、日本経済は大転換へ~市場の圧力が「日銀の不合理な政策」を変更させた
日銀の政策変更は、金融緩和政策の終了に向かっての第一歩だ。日本経済は、これから大きく変わる。これは日銀が望んで行なったことではない。市場の圧力に押されて行われたことだ。こうしたメカニズムが、健全な経済を支える。 【写真】来たるべき2023年、世界は大きく変わるが、日本は翻弄されても変わらない
2023年の日本経済は、これまでと大きく変わる
日本銀行は、昨年12月20日に長期金利の変動幅を引き上げた。 決定直後から、長期金利が急上昇し、為替レートが急激に円高になった。金利の上昇と円高方向への為替変動は、さらに続くだろう。 これは、企業の業績やさまざまな経済活動に大きな影響を与える。2023年の日本経済は、2022年のそれとは大きく変わるだろう。 ところで、上記の日銀決定は、日銀が自ら望んで行ったものではない。市場の圧力に追い詰められて、行われざるを得なかったものだ。 では、どのような経緯で日銀は上記の決定に追い込まれたのか? それについて、以下に説明しよう。
矛盾した政策が投機の対象となった
2022年の3月以降、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が金利を引き上げ、世界各国の中央銀行もそれに追随した。ところが、日本銀行はそれまでの金融緩和政策をかたくなに続け、金利を抑制し続けた。その結果、様々な歪みが生じた。 何より大きな問題は、日米の金利差が拡大した結果、急激な円安が進み、輸入物価が高騰して、国内の物価が上昇したことだ。 これに対処するため、政府はガソリン価格や電気料金の凍結等の物価対策を行った。物価高騰の原因を日銀が作り、政府が火消しに回るというのは、全く矛盾した事態だ。 矛盾した政策は、投機の対象となる。事実、そのような投機が生じた。 海外のヘッジファンドが、日銀の金利抑制策が近い将来に変更されるだろうとの見通しの下で、投機を仕掛けた。これは、日本国債のショートポジション(先物売り)を取るという戦略だ。 見通しどおりに日銀が金利抑制策を解除して金利が上昇すれば、この取引は利益をあげられる(このメカニズムは若干複雑だ。詳しい説明は、拙著『円安と補助金で自壊する日本』〈2022年10月、ビジネス社〉を参照されたい)。 2022年の6月には海外ヘッジファンドによるこのような取引が急増し、日本の国債市場で取引が1時停止になるなどの混乱が生じた。 ただしこのときには、日銀が巨額の国債を市場で購入して防戦し、結局のところ、長期金利の上限は維持された。ヘッジファンドは敗退した。