2023年に懸念すべきは円安か円高か

2023年01月13日

昨年の為替市場では1ドル150円台まで円安が一時進み、円売り介入が行われるなど大きく変動した。昨年末から年初にかけてドル円130円台前半で推移しており、2022年間では約14%円安ドル高が進んだ事になる。 【画像】2020年、世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は? 「日銀による金融緩和で円の価値が失われる」「貿易赤字拡大や経済衰退が円安を促す」など筆者からみれば根拠が曖昧な議論がメディアで目立った昨年秋口に、極端に円安が進んだ様に思われる。一方、同様の理由で、2023年も円安が続くとの見方も散見されている。 「日本の財政状況が危機的である」「金融緩和が行き過ぎている」などの認識を抱く論者は、「悪い円安」「通貨安で国が貧しくなる」「キャピタルフライトが起きる」などの見方に傾きがちである。実際には、緊縮政策志向が強い経済当局の見解やそれを情報源にする大手メディアの報道は、日本の財政状況に関して総じて悲観方向に偏っている。それらが、「根拠が薄い円安見通し」あるいは「円暴落論」に影響していると筆者は常々考えている。 もちろん、米欧の高インフレとは比べようもないが、日本でも2022年は円安や食料品などの価格上昇が広がったこともあり、インフレ率は上昇し、2%インフレの目標実現に近づきつつある。ただ、これまでの金融緩和政策が、2%物価安定にようやく奏功しつつあるという段階だろう。 つまり、高インフレに程遠い現在の日本で懸念されるのは、円安リスクを唱える論者が論拠とする「財政政策が過大になっている」ことではなく、むしろ緊縮財政政策に早期に転換する事だろう。このため、財政政策への懸念が、大幅な円安を引き起こす可能性はかなり低いと筆者は考えている。 ■ 2023年米経済は大きく減速し、ドル安円高期待が強まる可能性 昨年12月後半以降、ドル円と米長期金利の連動性が崩れているが、2023年のドル円の動きは、22年同様にFRB(米連邦準備理事会)の政策動向や米国の長期金利が左右する側面が大きいとみられる。 FOMC(公開市場委員会)メンバーの大多数は、5%超までの利上げを続けることを想定している。米国では景気減速の兆候が増えているが、労働市場の逼迫が和らがない状況が続いている。FRBによる利上げ到達点は近づいているが、高インフレとの戦いをやめるにはもう少し時間がかかるとみられ、春先まではドル高円安に再び動く場面があってもおかしくないだろう。 ただ、FRBの大幅な引締めによって2023年の米経済は大きく減速する可能性が高く、年央までにはFRBの政策姿勢も変わるとみられる。筆者の予想が正しければ、為替市場ではドル高期待が年央までには薄れて、ドル安円高期待が強まる可能性がある。 ■ さらに、岸田政権の政策が経済正常化を阻む 日本では、2%インフレを安定的に実現するためには、賃上げを伴う広範囲な価格上昇が必要である。今年の春闘賃上げ率は、1999年代半ば以来となる3%前後まで上昇するとみられ、賃上げが個人消費を支えるという好循環がようやく始まることが期待される。 ただ、米国経済が失速して、更にドル安円高圧力が強まれば、これは、日本経済の大きな足かせになる。2023年の2%インフレの安定的な実現は難しいのではないか。 更に、岸田政権の政策が経済正常化を阻むリスクが想定される。昨年末から防衛支出、子ども支援策の拡大を理由に、経済状況とは無縁と位置付けられる増税政策が俎上に載っている。岸田政権において、経済成長を高める政策姿勢が一段と弱まりつつある様にみえる。 ■ 警戒すべきは予想外に円高が進むこと 経済正常化を実現するには、企業が賃上げや設備投資拡大に前向きになることが必要だろう。ただ、政治的な歳出拡大や分配政策が、将来の増税とセットで実現するのであれば、企業や家計の支出行動にブレーキがかかる。経済安定化政策に対する不信感が強まれば、アベノミクス以前の経済状況に戻ることが意識され、これが円高要因になりかねない。 以上を踏まえると、昨年に続いて大幅な円安が進む可能性は低く、むしろ警戒すべきは予想外に円高が進むことではないかと筆者は考えている。 (本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

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