24年ぶり円買い介入も効果は一時的? 自国通貨買い介入が不利な理由

2022年10月06日

政府・日銀が24年ぶりの自国通貨買い介入

政府・日銀は9月22日夕方、ドルを売って円を買う自国通貨買い介入を実施しました。その結果、1ドル=145円台後半まで進んでいたドル高が止まり、1ドル=140円台前半まで押し戻されました。政府・日銀が自国通貨買い介入を行ったのは、実に1998年6月17日以来、約24年3カ月ぶりのことです。

日本が円買い介入を実施するのは、極めて稀です。過去、輸出主導型の経済と言われてきた日本は、円高を回避する傾向が非常に強く、そのため政府・日銀による為替介入は円高を阻止するための円売り・ドル買い介入が大半を占めてきました。

これは財務省のデータを見ればわかります。1991年から直近までの介入実績が一覧表で掲載されていますが、この31年間で円高誘導目的の円買い介入が断続的に実施されたのは、1991年5月~1992年8月までに行われた7871億円の円買いと、1997年12月~1998年6月までに行われた4兆1061億円の円買いだけです。あとは基本的にドル買い・円売り介入でした。その意味では、極めて珍しい円買い介入が、約24年3カ月ぶりに実施されたことになります。

過去、日本の円買い介入が成功した代表例としては、1985年のプラザ合意が挙げられます。当時、双子の赤字に悩んでいた米国で反日ムードが強まったことから、ドル高是正を目標にしたドル売り介入(結果的に円買い介入になる)が実施されました。

しかも、プラザ合意はG5である米国、英国、フランス、ドイツ、日本の間で交わされた合意であり、なかでも円とドイツマルクを対象に、対米ドルレートを上昇させるためのドル売り協調介入が行われたのです。その結果、プラザ合意前は1ドル=240円前後だったのが、1988年には1ドル=120円台になったのです。ただ、これは例外中の例外ともいうべきことで、何よりも大きな要因は、米国がドル安を望んでいたということです。

外貨準備高以上のドルは売れない、自国通貨買い介入の限界も

基本的に、自国通貨買い介入は不利です。それも対米ドルでの自国通貨買い介入ともなれば、なおのことといっても良いでしょう。

円売り介入を行う場合、外国為替市場で売る円を調達する必要があります。どうするかというと、財務省が一般会計とは区分された「外国為替資金特別会計(外為特会)」を通じて、「外国資金証券」と呼ばれる政府短期証券(FB)を発行し、それを全額、日銀が引き受けます。これによって調達された円資金が、円売り介入を行う際の原資になります。

そして、実際に円売り介入を行った結果、外国為替市場で購入したドル資金は、全額が外貨準備に組み入れられます。つまりドル買い介入を行った分だけ、日本の外貨準備高が膨らむのです。

逆に、自国通貨である円を買う介入を行う場合は、政府が手持ちのドルを売って、円を買うという流れになります。そして、このオペレーションを実施するために必要なドル資金は、円売り介入で外貨準備に蓄積されたドル資金が用いられます。

2022年8月現在、日本の外貨準備高は1兆2920億7200万ドルあります。1ドル=145円で計算すると、約187兆3400億円です。

とはいえ、その内訳を見ると、米国国債が大半とみられる証券が1兆367億8100万ドルもあります。外貨準備をフル活用して円安に歯止めを掛けようとしても、恐らく米国国債を積極的に売却することは出来ないでしょうから、米国国債以外の資産で保有されている外貨準備から、円買い介入を行うための原資が捻出されると考えられます。

ドル安につながる円買い介入を米国は容認し続けるか?

では、今回の円買い介入は成功するのでしょうか。つまり円安に歯止めをかけることは出来るのでしょうか。

円買い介入実施後、1ドル=140円台まで円高が進んだものの、週明け9月26日には1ドル=143円台後半まで押し戻されてしまいました。立て続けに多額の資金を投入して円を買い支えるにしても、外貨準備高には限度があります。

プラザ合意後の円買い介入が成果を収めたのは、それを米国が望んだことが非常に大きかったと考えられます。多額の貿易赤字を抱え、貿易不均衡に対する批判を強めていた米国からすれば、自国の輸出企業にとってポジティブな材料となるドル安進行は、大歓迎でした。ドル安が米国の利害と一致したからこそ、1ドル=240円から120円という急激な円高を、米国が容認したとも言えます。

しかし、今回の円買い介入は、果たして米国にとってポジティブでしょうか。8月の米国消費者物価指数は、前年比で8.3%の上昇となりました。6月の9.1%に比べればやや低下したものの、まだ高止まりしています。米国の消費者物価指数は、1980年5月に14.7%まで上昇していますが、それ以来の高い水準です。

FRBは9月21日まで開いた会合において、過去3回連続で0.75%という大幅な利上げを決めました。何が何でもインフレを潰そうという強い意志の現れといっても良いでしょう。インフレの鎮静化を至上命題にしている米国にとって、今のドル高は好都合なのです。

そうである以上、ドル安につながる円買い介入を、米国がサポートすることはないでしょう。つまり、日銀が今後、介入を行ったとしても、恐らくその効果は一時的なものに止まり、再び円安に転じる可能性が高いと考えられます。そうである以上、日銀介入による一時的な円高は、ドル投資で短期的な値幅を取る絶好のチャンスともいえるのです。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。


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