ECB総裁「エネルギー価格抑え込めない」限界嘆く 利上げは継続
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、過去最大の上げ幅となる0・75%の利上げを決めた8日の理事会後の記者会見で、インフレ(物価上昇)抑制には長期間を要するとの認識を示し、今後も利上げを続ける強い意向を述べた。一方で、「私にはエネルギー価格を抑え込むことはできない」と金融政策の限界を嘆く一幕もあった。
ラガルド氏は会見で、8月に9・1%に達したユーロ圏19カ国の物価上昇率に言及。「持続性があり、規模も大きいインフレを前に、断固とした行動を取る必要があった」と説明した。現状は「物価上昇率をECBが目標とする2%に引き下げるめどを立てるには、ほど遠い状況にある」との認識を示し、金融政策の効果が表れるには一定期間を要するとの見方を語った。
一方、利上げは経済を減速させる。ECBは今後の欧州経済について、最も可能性の高いシナリオとして2022年は3・1%、23年は0・9%、24年は1・9%の成長率を予測している。ラガルド氏は「22年10~12月期と23年1~3月期に経済が停滞するものの、23年もマイナス成長にはならない」との見方を示した。ただ、ロシアからの天然ガス供給が完全に途絶え、ガスの供給制限が実施されることなどを想定した予測では、23年はマイナス成長を見込んでいるという。
また利上げは、企業や人々がお金を借りるコストを上げ、過熱した需要を冷ます効果がある半面、エネルギー不足など供給側が主要因のインフレへの効果は限定的とされる。しかし、ECBが無策だと市場に判断されると信認が揺らぎ、インフレが加速しかねない。
ラガルド氏は米国とユーロ圏のインフレの違いについて「米国は需要側、ユーロ圏は供給側の要因が大きい」と説明。「私はエネルギー価格を下げられないし、世界の大企業にガス価格を下げるよう説得することもできない」と憂えた。その上で「金融政策にできることは(人々が物価上昇を予想することで、実際に物価上昇を招く)インフレ期待を抑えることだ」と語った。【ブリュッセル宮川裕章