FRBと日銀は真逆の政策、物価の番人に相応しいのは
総務省が26日発表した8月の東京都区部の消費者物価指数は生鮮食品を除く総合が102.4と、前年同月比2.6%上昇した。上昇は12か月連続で、伸び率は消費税増税の影響があった2014年10月の2.6%上昇以来、7年10か月ぶりの大きさとなった。
9月20日に発表される8月の全国消費者物価指数(除く生鮮)は、前年同月比2.7%の上昇との予想となっている。
全国消費者物価指数は10月以降、通信料(携帯電話)の引き下げの反動により、0.4%程度引き上げられる。この影響も加味すれば、12月にも日銀の物価目標となっている全国消費者物価指数(除く生鮮)での3%台乗せの可能性が出てきた。
ここにきて日銀は生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコア)を重視しているような姿勢をみせているが、そのコアコアも12月に2%に接近することが予想される。
これに対し、日銀の黒田総裁は27日に米カンザスシティー連銀主催のジャクソンホール(ワイオミング州)会合におけるパネル討論会後の質疑応答で、日本のインフレのほぼ全てが商品価格上昇によるものだとし、日銀は金融緩和策を維持する必要があるとの見解を示した。
日本だけがインフレのほぼ全てが商品価格上昇によるものだとは考えられない。企業物価指数と消費者物価指数の乖離が大きいことは確かである。それでも商品価格上昇が全般に波及し、それが賃金上昇要因ともなりつつある。
日銀の物価目標2%は商品価格上昇によるものであろうが、クリアしていることもたしかである。
それも一時的とかではなく4月から続いている。日銀も少なくとも1年程度、2%台が続くという予測を出している。
それにもかかわらず、いろいろと理由を付けて、非常時緩和の政策修正にすら動かないのは、自らの政策に対して修正はありえないといった認識を持っているためなのだろうか。
FRBはインフレファイターとしてセントラルバンカーたる姿勢を強めてきている。パウエル議長は短い時間の講演で、市場にあった来年の利下げといった楽観論を封じ込めた。
現在のFRBと日銀は真逆の政策を取っている。どちらが物価の番人として相応しいのかは言うまでもない。
中央銀行は何のためにあるのか。それは特にインフレ時に金融政策を使ってそれを封じこめるということが、その使命の念頭にあったはずである。
その使命を考えれば、少なくとも日本でも物価を取り巻く環境を考慮すれば、非常時対応の強力な金融緩和策は続けるべきでないという議論が出てしかるべきではなかろうか。
久保田博幸金融アナリスト