FRBの損失発生は利上げを制約するか:損失は日銀の正常化実施の障害となるか

2022年11月03日

米連邦準備制度理事会(FRB)が大幅な利上げを続ける中、FRBが赤字に陥るタイミングが迫っている。それが直ぐにFRBの利上げの大きな障害とはならないだろうが、FRBが政治的な圧力にさらされるきっかけとなる可能性がある。この点から、多少長い目で見れば、利上げを一定程度制約する要因になり得ると言えるだろう。 FRBに限らず、各国中銀の重要な収入源となっているのは、国債を中心とした保有債券からの利子(金利)収入である。中央銀行は、通常の金融政策運営をしている際にも、一定程度の国債を民間銀行から買い入れ、それと交換に中銀当座預金というマネーを民間銀行に供給している。それが、経済が成長していく中で必要となる銀行貸し出しや現金を生み出す原資となるのである。 さらに近年では、幾つかの中央銀行は、国債など債券を大量に買い入れるバランスシート拡大策を導入している。その結果、中央銀行が買い入れた債券の利子収入は大幅増加傾向にあった。ところが今年に入ってからは、FRB、イングランド銀行(BOE)など主要中央銀行は、バランスシートを縮小させる量的引き締め(QT)を始めたため、利子収入は減り始めている。 さらに、短期の政策金利を引き上げているため、それに連動して中央銀行が民間銀行に対して支払う中銀当座預金の利払いが増加している。利子収入は長期金利、利払いは短期金利と連動するため、中央銀行が短期金利を大幅に引き上げ、長短金利が逆転(逆イールド)すると、中央銀行の収入はネットで減り始め、いずれは経常赤字に陥ることになる。さらに赤字が拡大すれば債務超過に陥るのである。

中央銀行は債務超過に陥っても破綻はしないが政治リスクを強く警戒

仮に中央銀行が赤字あるいは債務超過に陥っても、自らマネーを生み出し、債務返済を無制限にできる中央銀行は基本的には破綻しない。しかし、赤字あるいは債務超過に陥れば、中央銀行の債務、つまり通貨の信頼性に悪影響が及び、物価高、通貨安などの弊害が生じる可能性がある。 さらに、中央銀行はそのネットの利子収入(利子収入―利子支払い:シニョレッジ)のほとんどを、政府に納付している。中央銀行が赤字あるいは債務超過に陥れば、この納付金が減る、あるいはまったく払えなくなり、その分政府の歳入に穴が開くことになる。それは間接的な国民負担となることから、中央銀行がその失策を政府、議会、国民から厳しく問われることになりかねない。 日本銀行の場合には、日本銀行法を改正して、独立性を制限する動きへとつながる可能性がある。こうした政治的リスクを踏まえると、中央銀行は、利上げ局面で赤字あるいは債務超過になることを、できるだけ避けようとするだろう。

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