IMFがイギリスの減税政策に警告 「不平等を加速させる」
国際通貨基金(IMF)は27日、イギリス政府の減税政策について、生活費危機を加速させる可能性があると批判した。IMFが明確な警告を発するのは異例。 イギリスのクワジ・クワーテング財務相は23日、大幅な政府借り入れを前提とした450億ポンド規模の減税政策を発表。所得税や住宅購入の際の印紙税を減らすほか、法人税の増税計画も廃止する。これにより、経済成長に弾みをつけたいとしている。 しかし、市場ではすでにこの政策への危機感が高まっており、英ポンドが大幅に下落したほか、英国債や株式にも影響が出ている。 一方、リズ・トラス新政権は、この政策が経済成長の足掛かりになるとしている。 IMFは今回、「イギリスを含む多くの国でインフレ圧力が高まっていることから(中略)現時点では大規模で的を絞らない財政措置は推奨しない」と指摘。「さらに、イギリスの政策は不平等を加速させる可能性がある」と述べた。 その上で、11月末に発表される秋季予算では、より的を絞った支援を提供するとともに、高所得者に有利な税制措置を再考するよう求めた。 こうしたなか、英中央銀行のイングランド銀行は27日、ポンド下落に対応するため、利上げをする可能性があると示唆した。 チーフ・エコノミストのヒュー・ピル氏は、同行はここ数日の経済動向に「無関心ではいられない」と発言。ポンドを守るために「重要な金融政策対応」を行う必要があるだろうと述べた。 英財務省は、「国民全員の生活水準を高めるために経済成長に注力している」と述べた。 また、クワーテング氏は秋季予算の中で中期計画を発表する予定であり、国内総生産(GDP)に占める公的債務の割合を中期的に確実に減少させる措置も含まれていると明らかにした。 IMFの声明に対し、トラス首相に近く、 ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)交渉を担当したデイヴィッド・フロスト卿は、「IMFは常に非常に伝統的な経済政策を推進しており、そのせいで何年も低成長と低い生産性が続いている」と批判。「イギリスを前進させる唯一の方法は減税と支出抑制、そして大掛かりな経済改革だ」と述べた。 一方、最大野党・労働党のレイチェル・リーヴス影の財務相は、「11月の予算発表まで待つことはできない。(中略)政府は先週発表した財政計画をすぐにでも考え直すべきだ」と述べた。 ■国外の反応は 元アメリカ財務長官のラリー・サマーズ氏はBBCの報道番組「ニューズナイト」に出演し、「主要7カ国(G7)による政策発表が、市場からも経済専門家からも、これほど否定的な反応を引き出したことは、正直言って記憶にない」と話した。 「ある国で金利が2日間でこれほど上昇し、同時に通貨が大きく下落した場合、それは市場の信用と信頼が大きく損なわれたことを意味する」 「今回のIMFの警告は、イギリスのような国より、新興国の新政府が頻繁に受けるようなものだ」 またロイター通信によると、米ホワイトハウスのブライアン・ディース経済顧問は、出席したイベントでイギリスの財政計画について聞かれたところ、市場の否定的な反応には驚いていないと回答。「財政の慎重さや財政規律」に焦点を当てることが重要だと述べたという。 格付け会社ムーディーズは28日、イギリスの「大規模な財源のない減税計画」は「クレジットネガティブ」になると発表。「借り入れコストの上昇と成長見通しが弱まる中で」、赤字の拡大と持続につながるとした。同社は今回、イギリスの格付けは変更していない。 (英語記事 IMF sounds alarm on UK tax cut plans)
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